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『冷静に他者を思いやる』をモットーに、満たされる「作業」を共創する ~アシテック・オコ代表取締役 小林大作さんとの対談・前編〜

『冷静に他者を思いやる』をモットーに、満たされる「作業」を共創する ~アシテック・オコ代表取締役 小林大作さんとの対談・前編〜

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テクノツール代表の島田真太郎(以下、島田)が、テクノツールに関わる方や気になる方と対談し、双方の魅力を紹介していく当企画。
今回はアシテック・オコ代表取締役の小林大作さん(以下、小林)を迎えて、テクノツールとアシテック・オコの共通点である”アシスティブテクノロジー”の話題を筆頭に、お互いの事業や価値観を語り合います。


アシテック・オコは、アシスティブテクノロジーを略して「アシテック」と、作業療法士の”Occupy”(作業)の語源である「オコ(OC)」を合わせて命名され、「時間的・空間的・肉体的に何かに占められている状態」とされる『作業』にフォーカスを当て、その『作業』で満たされる状態をサポートしたいという想いから付けられた社名です。


代表の小林さんは、経営者でありながら、一人の作業療法士として当事者と向き合っています。前編では、作業療法士として「アシスティブテクノロジー」を専門にしたきっかけと、小林さんならではの視点とそのルーツをお送りします。SNSを通じて知り合って以降、違う立場でありながら同じ課題感を持つ者同士で共感したという、小林さんと島田の冷静かつ情熱的な掛け合いをお楽しみください。

注)アシスティブ・テクノロジーとは、テクノロジーを活用して活動や生活がより良くなるように支援する技術を指す。障害のある人の生活機能を向上させたり、低下を防いだり、改善させる目的に用いられる、ありとあらゆる品目、装置部品、製品システムである『アシスティブ・テクノロジー・デバイス』と、機器の選定、入手、あるいは使用を支援するためのあらゆる直接的なサービスである『アシスティブ・テクノロジー・サービス』の両方が含まれた概念である。(アシテック・オコ公式サイト内『アシスティブ・テクノロジーとは』より https://assitech-oc.com/assistive-technology )

左から島田、小林さん

アシスティブテクノロジーを仕事にしたきっかけ

島田

小林さんがアシスティブテクノロジーの分野に深く入り込むことになったのはなぜですか?

小林

そもそものきっかけは、作業療法士になって1年目の時に出会った「中心性頸髄損傷」という名前の、「手はほぼ動かないけれども、足は動く」という症状を持った患者さんですね。ナースコールが押せず、ベッドを操作できなくて、奥さんも何もできなくてかわいそうだって言うし、本人も何もできないと言っていたんです。

そこで、知り合いの作業療法士さんに相談して助言をもらい病院のナースコールを押せるように自助具を作製しました。自分で押せるようになったことで、本人も自信が持てたし、奥さんも安心できたんです。

困ってるっていうのは実は解決策がわかるから言えるのであって、どうしようもないことは諦めてしまうんです。
それって支援する側が選択肢を提示できていないのが大きいんです。
そう考えていくと、アシスティブテクノロジーはその方の持つ「やりたい」「できるけどやらない」「やらない」といった意向に対して選択肢を広げられて、どちらも選べないという状態を避けることができると思うんです。

病気で体が動きづらいと、本人が訓練して何とかして頑張らなくちゃいけないと一義的に押しつけられることも少なからずあります。もちろん訓練も大切だけど、今できることで本人がやりたいことやったらいいじゃないっていうスタンスが大事だと思います。

島田

いいですね、そのスタンス。

テクノツールで言うと、テクノツールにはプログラマーで脳性麻痺の当事者である本間一秀さんがいるのですが、彼にとってゲームってまさにそれで。

子供の頃はゲームで遊んでいたけど、いつの間にか無意識のうちにできないと諦めていたんです。

でも、Flex Controllerができたことで自分もゲームができるという新しい楽しみができて、その後の開発においても自分の作りたいものが作れるようになったことでモチベーションが上がったんです。

冷静に他者を思いやる

島田

小林さんは以前、「目的を真ん中に据えて、ご本人もご家族もその目的に対して客観的な立場で議論していこうよ」という話をしていたと思うのですが、医療関係者や福祉関係者を含めて議論をデザインしていくことも作業療法士の仕事だと考えていますか?

小林

病気って、医学的にどうかって言うところが抜けた状態で会話されることが多いので、医師との連携を取り、科学的根拠も踏まえて予後を考えて、活動や生活ができるだけ良い形が続くことを考えて調整していく必要があるんです。経済的にどうか、ここまでだったらお金を払えるという部分も含めて作業療法士の仕事だと考えています。

島田

生活に落とし込んでいく中ではその人の周りにいる人たちとの関係形成とか、働き方・学び方とか、個人だけじゃなくて広く関係性までやっぱり介入していく。そこが作業療法士として面白がれるか、大きなポイントになりそうですね。

小林

本人と家族が考えていること、生活のことややりたいことの専門家、つまりそれを解決できるのは「本人や家族」なので、結局専門家の輪の中に本人や家族が入っていないといけないんですよ。その真ん中に本人たちのやりたいことや目標とかを真ん中に置いて、そこに対して本人たちがどういう風に思っているかを対等に言える必要があります。

あと枠組みを持たないということが大事で、例えばケアマネージャーなら、ケアマネージャーの仕事だけしかしないとかなってくると、選択肢が狭まってくる。あなたは今どうしたいですかと言うことを聞きながら、この話題はあの人に言ったほうがいいかな、この話題だったら自分で対応できるなぁとか、課題や対応しなくちゃいけないことに対して調整していくのが、作業療法士が得意としていることだと思います。

本人ができることはあえてやらない方がいいことがあります。障がい者に対して「これやってあげるよ」と言う人にもちろん悪意はないんですけど、支援者が独りよがりになっていることも結構多いんです。だからこそ、できるだけ対等な立場になることを目指していますね。

島田

そういった考え方はアシテック・オコを起業する前から考えていましたか?

小林

そうですね、大学時代の先生から、「冷静に他者を思いやりなさい。思いやりすぎて気持ちを寄せすぎると、それはおせっかいになるからね」と教わりました。すごく良い恩師に恵まれたんですよね。

後編に続く

小林 大作(こばやし だいさく)
株式会社アシテック・オコ 代表取締役
作業療法士、認定作業療法士、専門作業療法士(訪問)、デジタル推進委員
一般社団法人 日本作業療法士協会 生活環境支援室 委員
一般社団法人 和歌山県作業療法士会 住環境福祉機器支援推進委員 委員長
一般社団法人 和歌山県訪問看護ステーション連絡協議会 理事
2007年に作業療法士免許を取得し、総合病院、訪問看護ステーションで作業療法支援を経験。
2021年4月より、当事者の生活を豊かにするテクノロジーを活用した支援の実現のため起業し、テクノロジーの活用に関する相談対応、自助具の有償サポート、講演など、公的保険外サービスとして展開中。