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『冷静に他者を思いやる』をモットーに、満たされる「作業」を共創する ~アシテック・オコ代表取締役 小林大作さんとの対談・後編〜

『冷静に他者を思いやる』をモットーに、満たされる「作業」を共創する ~アシテック・オコ代表取締役 小林大作さんとの対談・後編〜

HoshibaShinya HoshibaShinya

テクノツール代表の島田真太郎(以下、島田)が、テクノツールに関わる方や気になる方と対談し、双方の魅力を紹介していく当企画。

今回はアシテック・オコ代表取締役の小林大作さん(以下、小林)を迎えて、テクノツールとアシテック・オコの共通点である「アシスティブテクノロジー」の話題を筆頭に、お互いの事業や価値観を語り合います。

後編では、小林さんがアシテック・オコを起業した背景や起業後の変化、そして今後の展望についてお話していただきました。

アシテック・オコを起業した背景

島田

 アシテック・オコが起業に至るまでの背景と、収益化が難しいアシスティブ・テクノロジー事業に対して挑戦していこうと小林さんを走らせたエネルギー源を教えてください。

小林

 当事者が持っている可能性を選択できる状況を作りたいというのが1番でした。難病の場合、支援者によって支援の内容が全く変わります。だから当事者にとって、出会う支援者によってその後の生活にも影響があるんです。

 当事者の希望に対して、コミュニケーション支援をはじめとするアシスティブテクノロジーを活用した専門的な支援を提供できない状況を目にしていたので、現場に出て情報発信したいという思いがありました。ちょっとデバイスの工夫をするだけで自分の想像をはるかに超えた活躍をしている方が多くいて、そういった方々と出会ったら楽しくなってきて、これをもっといろんな人と一緒に共有できたらなと思ったんです。

考え方の変化

島田

 起業前後で何か考え方や、自分の立ち振る舞いの変化はありましたか?

小林

 テクノロジーを必要としている人はたくさんいても、情報がやっぱりまだまだ行き届いていないということがわかりました。

 セラピストがテクノロジーの可能性を知って、当事者に伝えていくという意識に変えていくべきだと思います。

 あとは、以前は「当事者に対していい支援をしたい」と考えていたのですが、今は当事者が社会で活躍することにまで繋がる支援をしっかりアプローチしていかなければならないと思います。具体的には、当事者が新しいことに挑戦して自分の能力をしっかり発揮していくために、テクノツールのように当事者を社員の一員として、受け入れる企業に繋げていくことです。

 今は法定雇用率を達成するために障害者を雇うということが多くなっています。

 ある能力を持っている方を雇いたいが、その能力を発揮するためには社内に物理的問題があるのでどうしようと悩んでいる組織に対して、「こういうことで解決できる」というサポートに力をいれていきたいと思っています。

本当のアクセシビリティ

島田

 そこに対して小林さんは、どんなことをされていくんですか?

小林

 困りごとを持つ当事者の意見や、本当の現場で取り組んでいるセラピストの方の意見を聞いて欲しいし、そこを作業療法士として売り込みたいんです。困りごとや地域社会で活躍されている当事者と、それを支援するために切磋琢磨している方々と、「臨床現場が生み出す本当のユニバーサルデザイン」を一緒に作り上げていきたいと思います。

島田

 当事者であっても、自分の他にどんなニーズがあるのかを理解していないと、プロダクトデザインには昇華できないと思います。作業療法士はそこを担える可能性はありますよね。当事者目線に立って開発しているつもりでも、当事者には使いづらい商品になったと言う例はテクノツールにも大なり小なりあると思っています。これを解決するにはどういうアプローチを取り入れていったらいいでしょうか?

小林

 いろんな立ち位置で、物事を見ながらやっていくのが大事なのかなと思います。当事者の意見をただ取り入れるのではなくて、当事者と(開発者が同じ土俵で)意見交換をした上で、「開発としてはここまではできる」、「当事者はこれをしてほしい」、「それを第三者のOTが間に入って進めていく」とかがいいのかなとは思います。

島田

 それで言うと、Flex Controllerの時はそういうことができていたかなぁと思います。コンセプト段階から当事者の方に意見を聞きつつ、ここまでは開発できるとか、ここは制約がある、みたいな話を赤裸々に情報交換していきました。

小林

 Flex Controllerはとてもいい例で、当事者の人たちにちゃんと意見を聞いて開発されているとお聞きして、すごくいいなと思っています。

ゲームのコントローラーに必要なアクセシビリティについてそもそもの理屈がわかっている方が携わることで、侃々諤々意見交換ができる。そして開発・製作に携わった当事者を特別視して、配慮してチームメンバーにしているわけではないと思うんです。

 だからそういうものを作れるかどうかですよね。アクセシビリティが基本搭載しているのと、アクセシビリティを後からつけたようなものとは全く違うので。

島田

 プロダクト開発とか、サービス開発とかの上流にあるコンセプト設計みたいなところからアクセシビリティが入ってくるべきで、今は出来上がった後におまけで考えるみたいな感じになっていますよね。

 テクノツールでもこれから就労支援事業所を立ち上げて、働く人・活躍する人・表に出る人を増やすことで、そのプロダクトデザインの上流みたいなところから当事者が入れるようにしたいんです。

小林

 すごくいいと思います。そういう方がロールモデルになってほしい。やっぱり障害の有無に関わらず働いているモデルがどんどん出ていってくれると良いなと思います。

 理学療法的な話では医学モデルをベースに話すので、機能的・予後的な話になりがちです。それも良いかもしれないけど、生活をデザインするという意味では、作業療法士が頑張れるのではないかと思うんです。

島田

 ほんとに小林さんみたいな作業療法士と一緒にやっていくのが必要ですね。

小林 大作(こばやし だいさく)
株式会社アシテック・オコ 代表取締役
作業療法士、認定作業療法士、専門作業療法士(訪問)、デジタル推進委員
一般社団法人 日本作業療法士協会 生活環境支援室 委員
一般社団法人 和歌山県作業療法士会 住環境福祉機器支援推進委員 委員長
一般社団法人 和歌山県訪問看護ステーション連絡協議会 理事
2007年に作業療法士免許を取得し、総合病院、訪問看護ステーションで作業療法支援を経験。
2021年4月より、当事者の生活を豊かにするテクノロジーを活用した支援の実現のため起業し、テクノロジーの活用に関する相談対応、自助具の有償サポート、講演など、公的保険外サービスとして展開中。