第2章 基礎編で、点字編集システムの基本はお分かりいただけたと思います。この章では、練習文を入力しながら便利な機能をいくつか経験してみましょう。
練習文を新たに入力します。「ファイル」→「新規作成」と進んで下さい。新しい文書画面が表示されます。
点字を入力する前にその文書に関する情報を入力しておきましょう。これは必須ではありませんがこれらの情報を正しく入力しておくと、文書情報画面を確認するだけで文書の内容を知ることができ、多くの文書を管理する場合に便利です。
「ファイル」→「文書情報編集」で文書情報画面が表示されます。
※文書情報をコピーするには、コピー元の文書情報を開き、「文書情報のコピー」を押します。つぎにコピー先文書の文書情報を開き、「文書情報の張り付け」ボタンを押してください。
図3-1 文書情報編集
ここでは、原本タイトル、著者名などの原本に関する情報と分冊番号・点訳者名を入力します。この情報は文書を保存するまでに入れておいてください。入れなければ全てブランクとして保存されます。
練習文は、
『カンタンDOS IBM DOSバージョンJ5.0/V 入門書』(日本アイ・ビー・エム株式会社 1993年)P4より引用しましたので、これを参考に文書情報を入力します。
(ピ)「文書名」「原本」「著者」などの項目名が1マス目から、入力内容が11マス目から表示されます。「原本」と「備考」は50マスありますが、ピンディスプレイには最初の30マスの内容が11〜40マス目に表示され左右カーソル移動キーで36マス目(記述内容の26マス目)にカーソルが移動したとき、26マスから50マス目の内容が11マスから35マス目に表示されます。従って、26から30マス目の記述内容は重複表示されます。
文書情報の入力が終わったら、改行キーまたは[保存終了]を押して点字編集画面に戻ります。
Escキーまたは[破棄終了]を押すと内容を保存しないで編集画面に戻ります。
以下の練習文を入力しながら、説明を進めていきます。
以後の説明で操作をファンクションキーを中心としたものとメニューで選ぶ方法を併記することがあります。例えば
F12/「ファイル」→「閉じる」
は『F12を押す』ことと『メニューから「ファイル」を選び、プルダウンメニューから「閉じる」を選ぶ』という2種類の操作が同じ結果になることを意味しています。
コンピューターに接するときに大切なのは、まず、「コンピューターは恐くない」という意識を持つことです。コンピューターは、ちょっとやそっとの操作ミスでは壊れません。安心してください。
次の操作だけは絶対にしないでください。
作業の途中で電源スイッチを切ったり、電源コードをコンセントから引き抜いたりすること。
ディスケットドライブの動作ランプが点灯しているときに、ディスケットをドライブから引き抜く。
あなたが何か操作したとき、それが現在の状態で不適切なものであれば、画面にメッセージが表示されるか、警告音が鳴ります。
このメッセージにはいろいろな種類があります。たとえば、その操作を受け入れられない理由を示すもの、次にどんな操作をしたらよいか指示するものなどです。このようなときには、特定のキーを押してメッセージを消してから正しい操作でやり直したり、メッセージの指示にしたがって操作をしたりします。
操作のしかたや表示されている項目の意味が分からないときに、特定のキーを押すと、操作のしかたや項目の説明が画面に表示されます。これを、オンライン・ヘルプといいます。
DOSは、具体的にどんな働きをしているのでしょうか?DOSの重要な機能をいくつか見てみましょう。
まず、コンピューターがどのような要素からできているのか簡単に説明します。
「コンピューターは恐くない」という見出しは、7マス目から入力することにします。行頭からスペースキーを6回押すとカーソルは7マス目に移動しますのでここから見出しを入力します。
図3-2 例題の入力
見出しを入力したら、改行キーを押して改行マークを入力します。カーソルは次行の行頭に移動します。
この位置で、スペースキーを2回押して3マス目から「コンピューターニ セッスル トキニ〜」と入力します。
図3-3 例題の入力2
行をあけたいときは行頭にカーソルを合わせ、改行キーを押します。行頭に改行マークが入り、カーソルは次行の行頭に移動します。
●一度あけた行(空白行)を取り去るには…
行頭の改行マークにカーソルを合わせ、削除キーを押すと、改行マークは消えて下の行が上がってきます。
(ピ)Shift+Ctrl+F4で改行、改ページ表示オンのモードに設定すると改行マークはRで表示されますが、オフのままでも文章の途中でピンディスプレイにカーソルのみが表示されている行で削除キーを押すと改行マークが削除されて下の行が上がってきます。
●入力済みの点訳文の途中に行あけ(空白行)を挿入するには…
行頭にカーソルを合わせ、改行キーを押すと改行マークが入り、その行に入力されていた点字は1行下に下がります。
点訳中に誤って電源コードを抜いてしまったり、停電が起こったりすると、文書の一部が失われたり修正した部分が元の状態に戻ったりします。長時間、継続して点訳を行う場合は、作業を終了するときだけでなく、点訳中にもときどき文書を保存し、突然の事故に備えましょう。
こうしておけば、コンピューターの電源が切れても保存した時点の内容は失われません。
上記の手順は初めて保存する時の手順ですが一度名前を付けて保存した後はF12/「ファイル」→「上書き保存」で上書き保存して最新の状態を保存します。
操作: F12/「ファイル」→「上書き保存」
この時、前述の2、3は生じません。すでに名前のついているファイルを「別の名前」で保存することもできます。このときは1.の操作を行ってください。ファイルをコピーすることと同じ結果となります。
編集中のファイルは新しく付けられた「別の名前」になり、別の名前を付ける前のウィンドウはなくなります。
ファンクションキーには、Shift・Ctrlとの組み合わせ、あるいはショートカットキーやメニューとを合計すると数十種以上の機能が割り振られています。また、↑↓←→等も組み合わせによりさまざまな機能を持っています。
F1を押すか「ヘルプ」→「操作ヘルプ」を選ぶと画面に表示され、いつでも確認することができます。
図3-4 ヘルプ
点訳をしていると同じ言葉がくり返し出てくることがよくあります。このような場合、その言葉を単語・短文登録しておくと簡単に間違いなく入力することができます。
全ての点字文字(63種)に対して登録が可能で、その文字とスペースキーとを同時に押すだけで、登録されている単語。短文を入力できます。
練習文の中に「メッセージ」という言葉が数回出てきますので、この言葉を登録してみましょう。
「メ」の字に「メッセージ」を登録します。
(音)「あ」と発声します。
(ピ)「あ」が表示されます。
図3-5 単語・短文登録
6点入力モードの場合
点字編集画面に戻ったところで「メ」とスペースキーを同時に押してみてください。「メッセージ」という言葉が表示され、カーソルはこの言葉の次のマスに移動します。
フルキー入力モードの場合(および、スペースキーの同時押しで正しく入力できない場合)
点字編集画面に戻ったところでメニューの中の「編集」の中の「単語短文入力」を選択します(Ctrl+Spaceでも可能)。
単語短文入力画面が表示されますので、上下カーソルキーで「メ」の行を選択し、Enterを押します。
練習文の入力を進めて「DOSのいろは」のところまで来たら、ここは大きな見出しですからページを改めて入力を続けましょう。
「DOSのいろは」の直前、「...ヘルプといいます。」のところまで入力したら、句点の次のマスで、F6を押します。
カーソル位置に改ページマークが入力されて、カーソルは次ページの文書行先頭に移動します。このページに「DOSのいろは」を入力しましょう。
(音)F6を押すと「改ページ」と発声します。また改ページマークにカーソルが移動しても同様に発声します。
(ピ)Shift+Ctrl+F4で改行・改ページ表示オンにすると改ページマークはPで表示されます。
以上の他に、タブ、検索、見出し/段落位置へのジャンプ、マーク/ジャンプなどの機能を使用すると特定の位置にカーソルを移動することができます。
Shift+F7(指定ページへジャンプ)は、初期設定では1ページにジャンプするようになっています。削除・後退キーで一旦移動先ページを0とし、新たにジャンプ(移動)したいページ数を入力します。
練習文の中に「など」という助詞がいくつか含まれています。これは助詞ですから、前の言葉に続けて書きます。この点訳が正しくできているか確認してみることにします。
検索機能を使用すると簡単に確認できます。
↓は押し続けずに軽く1回押して下さい。↓を押し続けると、最初に探し出された「ナド」を通過してしまうことがあります。
置換機能を使用すると検索実行後、あらかじめ指定した文字列に置き換えることができます。
練習文中の「ファイル」という言葉を「ブンショ」に置き換えてみましょう。
※7.で[一括置換]を選択すると置換実行の確認をすることなく、まとめて置換します。Escキーを押して点字編集画面に戻ります。置換した個数が表示されます。改行キーを押してください。
文書の読み直し・校正などをしている際、同じような記述をしている他の部分を参照したり、分かち書きや読みのチェックのため、一旦表示を大きく動かした後、再び元の位置にカーソルを戻したい場合があります。
このようなとき、カーソル位置のマーク/ジャンプ機能を使用するとすぐに指定位置にカーソルを戻すことができます。
(音)ジャンプ先の場所を読み上げます。
◆マークはマーク1から3(Ctrl+H,J,K)の3ヶ所指定でき、Shift+Ctrl+H,J,Kでマーク1〜3の位置にジャンプします。メニューの中のマークジャンプも同様です。
◆マークの付いているところで、再度マークの操作をするとマークを解除することができます。
指定範囲の文書を削除したり、同一文書内の他の位置に移動・複写することができます。同時に開いている他の文書への複写・移動については「もう一つの方法」を参照してください。
文中の「コンピューター」という文字列をほかの場所に複写してみましょう。
これと同じ操作をまったく違った方法で実行することができます。
点訳では通常、見出し・段落の始まりなどの行頭に偶数のスペース(2、4、6…)を入れます。点字編集システムには行頭のマスあけをチェックする機能があります。入力した練習文をチェックしてみることにしましょう。
◆行頭のマスあけに異常がなければ、警告音が鳴り、カーソルは移動しません。
◆文頭方向へのチェックはShift+Ctrl+PageUpで行います。
@日本語のマスあけチェック
日本語の場合、点訳文中で3マス以上のマスあけをすることは一般的にありません。点字編集システムには行中の「句点・疑問符・感嘆符の後の2マスあけ」および「句点以外の後の1マスあけ」をチェックする機能があります。
ただし、チェックは100%正しいとは限りませんので、あくまでも補助ツールとしてご利用ください。
(音)移動先のページと行の場所を発声します。
◆マスあけの異常がなければ、警告音が鳴り、カーソルは移動しません。
◆文頭方向へのチェックはShift+Ctrl+Homeで行います。
◆句点・疑問符・感嘆符の後の2マスあけチェックは、Shift+Ctrl+:(コロン)で行います。
A英語マスあけチェック
英語の場合、点訳文中で2マス以上のマスあけをすることは一般的ではありません。点字編集システムには行中の「2マス以上のマスあけ」および「句点の後の2マスあけ」をチェックする機能があります。
Ctrl+Homeでカーソルを文頭に移動します(チェックはカーソル位置から↑↓方向に実行することができますが、ここでは文頭から始めます)。
Shift+Ctrl+[/「校正」→「英語・行中マスあけチェック」
行頭以外で2マス以上スペースが入力されている位置、および句点の後で2マスのスペースが入力されている位置にカーソルが移動します。
(音)移動先のページと行の場所を発声します。
◆マスあけの異常がなければ、警告音が鳴り、カーソルは移動しません。
◆文頭方向へのチェックはShift+Ctrl+]で行います。
入力が終わったらページ行に番号を付けましょう。
ページ番号を付け終わったら、次に目次を作成する準備をしましょう。
点字編集システムには目次を自動作成する機能がありますが、この機能を使用するには、あらかじめ目次に書き出す「見出し」を指定しておく必要があります。
3. カーソル行が見出し指定され、表示設定で指定された色に変わります。見出しはその行に対してつけられますので2行に渡る内容を一つの見出しとして指定することはできません。2行に渡る場合、両方を見出しに指定し、目次を作った後で目次内容を修正してください。
(音)「見出し指定しました」と発声します。
(ピ)ブリンクまたは7・8の点とともに表示されます。
※見出しは行単位で指定します。カーソルは何マス目にあってもかまいません。
※見出しの指定は、入力後まとめて行っても、入力をしながら逐次行ってもかまいません。
(音)Shift+Ctrl+F5の見出し表示オン/オフをオンに設定するとCtrl+F3、Ctrl+F6などで読み上げる際、「見出し始まり」、「見出し終わり」と発声します。
(ピ)Shift+Ctrl+F5の見出し表示オン/オフをオンに設定すると見出しとして指定された行はブリンクまたは7・8の点とともに表示されます。
※Shift+Ctrl+F9、Shift+Ctrl+F10で前後の見出し指定行へカーソルが移動します。
前項で指定した見出し行とそのページのページ番号を取り出して目次を作成します。そのため、見出し指定とページ番号を付けてあることが前提です。
目次のつなぎ線を、2の点か5の点かを選択できます。
メニューの中の「設定」の中の「目次のつなぎ線」の中から「2の点」または「5の点」を選択してください。
目次の作成が終わったところで、標題紙(扉)を作成しましょう。
※標題紙の形式は固定されており、文書の先頭ページに作成されます。
※別ファイルに標題紙の原形をあらかじめ作成しておき、必要なときにそこからコピーする方法もあります。
点字編集画面については、2.1.3で 簡単に触れましたが、この節では点字入力に係わることを中心に少し詳しく説明します。
図3-13 編集画面
ページ行はページ番号を入力するための行ですが、原本ページ・欄外見出し等、自由に入力することができます。
文書行とは切り離された行として扱われ、行末処理の際にも前ページの最終行に入りきれなくなった文節はページ行をとばして、次ページの文書行1行目に移動します。
ページ行へのカーソル移動には↑↓を使用します。←→ではページ行にカーソル移動しません。
点字編集画面の行末付近で点字が入力されていないところや改行・改ページマークの後などには _(下線)があります。この下線は何も書かれていないこと(未入力位置)を示すものです。
点字編集システムでは、マスあけの際、スペースキーを押しますが、未入力位置にスペースを入力すると下線が消え、まったく何もない状態([表示]→[点字フォント]→[ドットあり]を指定している場合は小さい6点で表示されます)になります。ここには、スペースという「空白文字」が入力されていると考えて下さい。
「空白文字」(スペース、マスあけ)と「未入力位置」)とは違うということを覚えておいてください。
(ピ)空白文字と未入力位置の区別はピンディスプレイ上では困難ですがEndキーで行の右端にカーソルを移動すると、行末が改行・改ページの場合はこれらのマークの上に、それ以外の時は最初の未入力位置にカーソルが表示されます。
各行の行末にある2マスのX印は禁止帯で、行末処理を正しく行うためのものです。ここにはスペース、改行・改ページマークを入力することはできますが、点字が入力されると一連の文節は行末処理により下の行へ移動して行きます。処理は自動的に行われますので、点訳の際は特に注意する必要はありません。
(音・ピ)禁止帯は行末に2マスあり、例えば一行の設定が32マスの場合、33マスと34マスが禁止帯になります。Ctrl+F2の現在位置確認でカーソルが禁止帯にあるかどうかを確認できます。
メモ:行末のスペース
本機能は、これまでのクリップボードの機能を拡張することができます。初期設定は「なし」になっていますので、必要に応じて設定を変更して利用します。
設定を変更するには、「編集」→「拡張クリップボード」を開きます。または、編集画面で右クリックしてメニューを開き、「拡張クリップボード(形式)」を開きます。
形式 | 機能 |
---|---|
なし(初期値) | 拡張機能を無効にします |
NABCC | 点字編集システムの編集画面を選択してクリップボードにコピーした内容をNABCCとして、メモ帳など他のアプリケーションへコピーできます。
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墨訳 | 点字編集システムの編集画面を選択してクリップボードにコピーした部分を墨訳として、メモ帳など他のアプリケーションへコピーできます。
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Unicode | 点字編集システムの編集画面を選択してクリップボードにコピーした部分をUnicode点字パターンとして、メモ帳など他のアプリケーションへ貼り付けることができます。 メモ帳など他のアプリケーションに表示されたUnicode点字パターンを選択してクリップボードにコピーした部分を、点字編集システムへ貼り付けることができます。 ※ご注意
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Unicode(空白を□) | Unicodeのコピー時に空白を「□」で表示するようにします。それ以外はUnicodeと同じです。 |
行末改行 | 機能 |
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あり | 編集画面と同じレイアウトとなるように、各行の行末に改行を挿入します。 |
なし | 各行の行末に改行を挿入しません。 |
第3章 発展編はここで終わります。点字編集システムのいくつかの機能を使ってみましたが、これら以外にも多くの機能があります。もっと詳しく知りたい方は第4章以降を参照して下さい。